「祝い事だからきちんとした服装で臨まなければ」という親心や世間体が、真夏のお宮参りでは時として危険な落とし穴となります。お宮参りの夏用服装で大失敗する最大の要因は、伝統的な正装の保温性と、屋外の過酷な熱環境のミスマッチにあります。
日本小児科学会の救急医療関係者の指摘によると、生後1ヶ月の新生児は汗腺の機能が未熟であり、外気温の上昇に伴って体温が容易に跳ね上がります。一般的なお宮参りでは、赤ちゃんに「短肌着」「長肌着」「セレモニードレス」、さらにその上から家紋の入った厚手の絹やポリエステル製の「祝い着(産着・掛け着)」を重ねるのが慣習とされてきました。しかし、この4枚重ねの保温効果は羽毛布団に包まれている状態に匹敵し、わずか15分の屋外滞在であっても熱中症のリスクが跳ね上がります。
さらに、母親自身も悪露(おろ)やホルモンバランスの乱れが残る産後1ヶ月の過酷な時期にあります。母乳育児による脱水症状や貧血を抱えながら、締め付けの強い授乳しにくいフォーマルスーツや袷(あわせ)の着物を身にまとい、参道で行き倒れそうになったという失敗談は枚挙にいとまがありません。「伝統様式への過度な固執」と「乳児・母体の生理的限界の軽視」が重なったとき、晴れの舞台は一転して救急搬送の現場へと変わり果ててしまうのです。