同じ「ガス」という燃料でありながら、なぜこれほどまでに隔たりが生じてしまうのでしょうか。背景には、エネルギー産業としてのビジネスモデルの根本的な差異があります。プロパンガスが高い理由をひもとくと、大きく3つの要因が浮かび上がってきます。
第1に、LPガス料金の計算方法と内訳に根差す「完全自由料金制」の歴史です。かつて公共料金として法的な認可や上限設定が存在した都市ガスと異なり、プロパンガスは原則として各事業者が自由に価格を設定できます。基本料金(設備維持費、保安点検費、検針費など)と従量料金(原料費調整を含む使用量に応じた単価)から成る二部料金制が長年採用されてきましたが、競合が少ない地域では実質的な価格競争が機能せず、高止まりしたまま据え置かれてきた経緯があります。
第2に、物理的な配送コストと人件費の累積です。地中の導管網を通じて自動的に各家庭へ送り届けられる都市ガスに対し、プロパンガスは定期的に配送員が20kg〜50kgのボンベをトラックに積み、山間部や住宅街の細い路地を走って人力で交換しなければなりません。車両維持費、ガソリン代、配送ドライバーの人件費、そして24時間体制の保安点検義務など、物流コストがすべて従量料金に上乗せされています。
第3にして最大の闇とも言えるのが、賃貸アパートガス料金の仕組みに潜む長年の業界悪習です。賃貸物件の建築時、ガス会社がアパートオーナーに対し、給湯器やエアコン、モニター付きインターホン、配管工事などの高額な設備を「無償貸与」として肩代わり提供する商慣行が長く横行してきました。オーナーは建築コストを浮かせられる一方、ガス会社はその設備投資額を回収するため、入居者のガス従量料金にこっそり上乗せして請求します。入居者側にはガス会社を選ぶ権利がないため、知らぬ間に他人の設備投資費用を毎月のガス代として肩代わりさせられる不条理な構造が維持されてきたのです。