身体装飾を取り巻く言説の中には、医学的根拠や社会通念から乖離した危険な俗説が依然として流通しています。
代表的な誤解が「現代のタトゥーはMRI検査を問題なく受けられる」という言説です。確かに、旧来の墨や粗悪な顔料に多く含まれていた酸化鉄(金属成分)を排除したオーガニックインクを使用するスタジオは増えています。しかし、市販されている輸入インクの中には、微量の金属化合物(酸化鉄、酸化チタン、コバルトなど)が含まれている製品が少なくありません。これらがMRIの強力な磁場と高周波に反応すると、誘導起電力によって皮膚が異常発熱し、II度〜III度の重篤な火傷を負うリスクが生じます。そのため、多くの総合病院では、万が一の医療事故を防ぐ観点から、タトゥー保有者のMRI検査に対して慎重な事前同意書の提出を求めたり、代替検査への変更を打診したりするのが標準的な医療安全プロトコルとなっています。
また、「和彫りと洋彫りの違い」を単なる絵柄の好みと捉える傾向がありますが、使われている色素の化学組成にも大きな違いがあります。和彫りに多用される「墨」は炭素粒子が主体であるため、レーザーの波長(1064nmなど)が極めて反応しやすく、時間はかかるものの除去効率は比較的良好です。対照的に、カラフルなタトゥーに用いられる鮮やかな黄色、黄緑、ライトブルー、赤などの多色インクは、レーザーの波長が吸収されにくく、最新のピコレーザーを用いても「どうしても色が抜けきらず、中途半端な濁りとなって皮膚に残る」という技術的限界が臨床上確認されています。