耳に水が入った際、多くの人が真っ先に手を伸ばすのが綿棒である。しかし、耳鼻咽喉科クリニックの待合室では「綿棒で水を取ろうとして悪化させた」と訴える初診患者が絶えない。なぜ綿棒の使用がこれほどまでに忌避されるのか、そこには明確な3つの理由が存在する。
第1の理由は、耳垢の圧迫閉塞(耳垢栓塞)を招く点だ。綿棒の先端の直径は外耳道の幅に対して比較的太く、挿入するとピストンのように作用する。水分を拭き取るどころか、ふやけた耳垢をゴリゴリと鼓膜の直前まで押し込み、強固な壁を作ってしまう。こうなると家庭での除去は不可能となり、医療機関での専用器具による処置を余儀なくされる。
第2の理由は、外耳道皮膚の微細な損傷と細菌感染である。外耳道の皮膚は非常に薄く、わずか0.1mm程度の厚みしかない部位もある。水に浸かってふやけた皮膚は普段以上に脆弱になっており、綿棒の繊維で強く擦るだけで簡単に剥離してしまう。そこへプールや水道水に含まれる雑菌が侵入すれば、あっという間に激しい炎症へと発展する。
第3の理由は、誤操作による鼓膜の直接損傷だ。不快感から無意識に深く押し込んでしまったり、腕が何かに当たって綿棒が急激に奥へ突き刺さったりすることで、鼓膜に穴が開く外傷性鼓膜穿孔の事故が後を絶たない。耳に水が入った時の対処法として、「綿棒で奥を掻く」選択肢は真っ先に排除すべきだ。