当時の日本において、男性の長髪はロックミュージシャンや一部のアウトロー、あるいは特定の芸術家が好む「サブカルチャーの象徴」という認識が一般的でした。清潔感やビジネスシーンとは対極にあるとみなされていた男性の長髪像を、わずか数年で「最高峰のモテ髪」へと価値観ごと塗り替えたのが、90年代のキムタクブームです。
木村拓哉さんが提示したスタイルが画期的だった最大の理由は、「ワイルドさと圧倒的な清潔感の共存」にありました。従来の長髪にありがちだった重苦しさや威圧感を、軽やかな毛先の動きや絶妙なカラーリング、そして本人の圧倒的なルックスによって中和。テレビドラマの画面を通じて毎週のように映し出されるその姿は、女性ファンを熱狂させただけでなく、同世代の男性たちに「自分もあんな風にかっこよくなりたい」という強烈な憧れを植え付けました。
さらに、当時の男性ファッション誌や女性誌がこぞって特集を組んだこともブームを加速させました。街頭の若者たちが肩まで届く髪をかき上げる仕草を真似し、コスメカウンターやヘアサロンには男性客が急増。日本のメンズグルーミング市場そのものが、彼の長髪を起点にして大きく拡大したと言っても過言ではありません。