利他行動を語る上で避けて通れないのが、「他人のためと言いながら、自分が良い気分になりたいだけではないか」という疑問です。利他性と自己満足の真相をめぐっては、古くから利他行動の心理学において「純粋な利他主義は存在するか」という議論が重ねられてきました。
誰かを助けた後に心地よい充実感や誇らしさを覚えるのは、人間の生理的な反応です。心理学ではこれを「ヘルパーズ・ハイ(助ける者の高揚感)」と呼びます。援助した結果として副次的に満足感を得ること自体は、利他性を否定する理由にはなりません。問題は「目的」と「結果」の主客関係です。相手の苦痛を取り除くことが主目的であれば、結果として本人が満足感を得たとしても、それは純粋な利他行動とみなされます。
一方、偽善との決定的な違いは、視線の向きにあります。偽善とは「他者からの賞賛や評判の獲得、あるいは罪悪感の回避」が真の目的であり、他者の救済はそのための手段に過ぎません。誰にも見られていない状況で同じ行動を取れるか、自分の評判が上がらない場面でも他者に手を差し伸べられるかが、真の利他性と偽善を分かつ決定的な試金石となります。