親方の定年問題で最も角界を揺るがすのが、「相撲部屋の後継者問題」です。相撲協会の規定上、「参与となった親方は相撲部屋の師匠(代表者)を務めることができない」という厳格なルールが存在します。
そのため、部屋持ちの親方が65歳を迎えるにあたっては、必ず以下のいずれかの決断を迫られます。
1つ目は、信頼できる弟子や部屋付きの若手親方に師匠の座を譲る「部屋継承」です。新師匠が年寄名跡を受け継ぎ、看板を掛け替えるか同名のまま部屋の運営を引き継ぎます。この場合、所属力士や床山、行司の生活環境は保たれます。
2つ目は、適任の後継者が見つからない、あるいは名跡の手配がつかない場合に行われる「相撲部屋の閉鎖と力士の移籍」です。部屋が閉鎖された場合、所属力士や裏方は同一一門の別部屋へと集団で移籍することになります。慣れ親しんだ稽古環境が変わることは力士の相撲人生を左右するため、師匠の定年間近には水面下で激しい調整が繰り広げられます。