三千院の境内には、心に深く刻まれる象徴的な景観が点在しています。参拝者が必ず足を止める主要な見どころを詳しく見ていきましょう。
微笑みで迎える「わらべ地蔵」の造形美
有清園の青苔に包まれるように佇むのが、愛らしい表情で知られる三千院のわらべ地蔵です。杉木立の木漏れ日を受け、首をかしげたり、寄り添い合ったり、腹ばいになって空を見上げたりする姿は、見る者の心を和ませます。これらの石仏は平安の古仏ではなく、平成初期に彫刻家・杉村孝氏によって奉納された現代の芸術作品です。長い年月を経て苔や地衣類が自然に馴染み、周囲の庭園と一体化したことで、大原の象徴的な景観として定着しました。
極楽浄土を現出させた国宝「木造阿弥陀如来及両脇侍坐像」
有清園の中央に建つ「往生極楽院」は、平安時代末期の1148年に建立されたと伝わる三間四方の簡素な御堂です。堂内には、建物に対して驚くほど巨大な国宝の阿弥陀三尊像が安置されています。中央の阿弥陀如来を挟む観世音菩薩と勢至菩薩は、正座の原型とされる「大和坐り」で前かがみに膝をつき、死者を極楽へ迎え入れようとする緊迫感と慈悲を表現しています。天井を見上げれば、かつて極楽浄土の舞楽や菩薩が極彩色で描かれていた「舟底天井」の痕跡が残り、堂内全体が一つの小宇宙を形成しています。