健康志向の高まりから、ネット上では「グラニュー糖をラカントやはちみつで100%置き換えるヘルシーレシピ」が数多く発信されています。しかし、調理科学の観点から見ると、ここには初心者が陥りがちな重大な落とし穴が潜んでいます。
エリスリトールを主成分とするラカントSなどの天然甘味料は、ショ糖とは物理特性が根本的に異なります。最大の特徴は「保水性が著しく低いこと」と「冷却時に再結晶化しやすいこと」です。パウンドケーキなどに全量使用すると、翌日には水分が抜けてボロボロと崩れる食感になり、冷えるとジャリジャリとした粉っぽさが舌に残ります。また、カラメル化が起こらないため、何分焼いても香ばしい焼き色がつきません。ラカントを使用する場合は、全量を置き換えるのではなく「グラニュー糖の30%〜50%をラカントに置き換える」部分代替に留めるのが、味と食感を破綻させない実践的な境界線です。
一方のはちみつは、約80%の糖分(ブドウ糖・果糖)と約20%の水分で構成されています。甘味度が砂糖の1.3倍〜1.5倍と高いため分量を2〜3割減らす必要がありますが、見落とされがちなのが「水分の混入」と「強い酸性度」です。はちみつを代用すると生地の水分バランスが崩れるだけでなく、はちみつに含まれる酸がベーキングパウダーのアルカリと過剰反応を起こし、想定外の膨らみムラや特有の苦味を引き起こすリスクがあります。