イラストを自然に見せるためには、モチーフとなる昆虫の正確な構造を知ることが近道となる。日本で最も身近な存在である「ナミアゲハ(Papilio xuthus)」は、前翅(ぜんし)と後翅(こうし)で大きく模様の役割が異なるのが特徴だ。前翅は規則正しい黒の縦ラインが走り、後翅には青や赤の美しい眼状斑と突出した尾状突起が存在する。
歴史的な「生物細密画(ボタニカル・サイエンスイラスト)」の領域では、標本を克明に観察して記録する技法が長年培われてきた。この科学的な観察アプローチをデフォルメイラストに応用すると、説得力が劇的に跳ね上がる。
すべての翅脈を丸暗記する必要はない。「羽の付け根から扇状に広がるメインの幹」と「縁に向かって枝分かれする枝」の法則性さえ掴んでおけば、どんなにデフォルメしても「本物のアゲハ蝶」としてのリアリティが損なわれることはないのだ。