セント・バーナードの口元を観察すると、上唇が大きく垂れ下がり、下顎を覆い隠す独特の形状をしている。専門用語で「フルー(Flews)」と呼ばれるこのたるんだ唇と深い口角が、唾液を保持できずに外へ押し出す第一の原因だ。物理的な構造上、唾液が口内に留まる容量が極めて少ない。
さらに、彼らの唾液腺そのものが非常に発達している事実も見逃せない。消化を助けるためだけでなく、呼吸器官を喉の乾燥から守る潤滑油の役割を果たしている。体温調節の手段がパンティング(開口呼吸)に限られる犬にとって、大量のよだれは熱を外部へ逃がす冷却システムの核心なのだ。猛暑が続く近年、この体温調節機能の重要性はさらに高まっている。