倉敷美観地区の柳並木を歩くと、突如として古代ギリシャ神殿を思わせるイオニア式列柱が姿を現す。1930年に設立された日本最初の私立西洋美術館、大原美術館だ。実業家・大原孫三郎が、早逝の画家・児島虎次郎の卓越した審美眼を信じて託した資金から、この奇跡のコレクションは産声を上げた。
虎次郎がヨーロッパで買い付けた作品群は、今なお色褪せない。エル・グレコの『受胎告知』の前に立つと、劇的な明暗のコントラストと霊的な気迫に息をのむ。クロード・モネが手塩にかけたジヴェルニーの庭から株分けされた睡蓮が揺れる中庭を抜ければ、ピカソ、マティス、ゴーギャンらのカンヴァスが惜しげもなく並ぶ。地方都市の一角にいながら、パリのオルセーやルーヴルの中枢にワープしたかのような濃密な西洋近代美術の粋を堪能できる。