低温調理において最も軽視してはならないのが、微生物学的な安全性です。牛肉の内部は通常無菌とされますが、表面には腸管出血性大腸菌(O157など)やサルモネラ属菌、カンピロバクターなどが付着しているリスクがあります。さらに、塊肉の筋膜処理や下処理の段階で菌が内部へ移行する可能性もゼロではありません。 厚生労働省の食肉衛生基準では「中心部を63℃で30分間加熱するか、これと同等以上の殺菌効果を有する方法」が定められています。食品安全委員会等の殺菌工学データ(D値・Z値に基づく殺菌基準)によると、中心温度60℃の場合は「12分以上」維持することで、63℃30分と同等の殺菌効果(7D以上のリダクション)が得られるとされています。 ここで極めて重要なのは、「調理器の湯煎温度が60度であること」と「肉の芯温が60度に到達していること」は全く別物であるという点です。肉の厚みに応じて熱が中心に伝わるまでのタイムラグ(熱伝導時間)を計算し、芯温が60度に達してからさらに規定の殺菌時間を加算する必要があります。
ローストビーフの低温調理は60度が正解?失敗防ぐ加熱時間と極上仕上げの秘密
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