「勿忘」という漢字表記に出会ったとき、どの読み方を当てはめるべきかは、その言葉が置かれている文脈とジャンルによって明確に分かれます。結論から言えば、現代日本語において「わすれな」「わするな」「ぶぼう」はいずれも正解であり、用途に応じて使い分けるのが正当なルールです。
もっとも一般的な「わすれな」という読みは、植物の「勿忘草(わすれなぐさ)」や、ポップカルチャーの作品名に代表される名詞的・詩的な読み方です。本来の文法からは少し崩れた情緒的な表現ですが、現代の日本語シーンでは最も広く親しまれています。
一方、古典文法に忠実な読み方が「わするな」です。古語動詞「忘る(下二段活用)」の終止形に、禁止の終助詞「な」が接続した構造を持ち、「決して忘れるな」という強い戒めや呼びかけのニュアンスを含みます。
さらに、漢語としての音読みが「ぶぼう」です。「勿(ぶ)」と「忘(ぼう)」を組み合わせた熟語で、古文書や石碑、四字熟語的な文脈において「忘れることなかれ」という教訓・誓いを表す際に用いられます。