多くのファンにとって忘れられないのが、映画『ハチミツとクローバー』(2006年)で演じた天才美大生・森田馨役だろう。自身も東京藝大出身というバックグラウンドを持つ伊勢谷にとって、この役はまさにハマり役だった。
常人には理解できない奇行を繰り返しながらも、圧倒的な才能と孤独を抱える森田。伊勢谷は、役作りという枠を超え、自身の美大生時代の記憶や葛藤をスクリーンに投影しているかのように見えた。狂気と無邪気さを行き来するその芝居は、原作ファンのみならず、多くの映画ファンを魅了し、「彼以外に森田を演じられる役者はいない」とまで言わしめた。