御誕生寺の歩みを知る上で欠かせないのが、曹洞宗の大本山である總持寺の貫首(住職)を務めた故・板橋興宗禅師(いたばし こうしゅう ぜんじ)の存在です。御誕生寺は、曹洞宗の太祖である瑩山紹瑾禅師の誕生の地である福井県武生(現・越前市)に、坐禅修行のための専門僧堂(修行道場)として2002年頃から本格的な建立が進められました。
修行の場としてスタートした同寺が「猫寺」と呼ばれるに至った契機は、本堂の建設工事中に段ボール箱に入れられて遺棄されていた4頭の捨て猫を板橋禅師が保護したことでした。禅師は「行き場のない小さな命を見捨てることは、仏の慈悲の心に反する」として手厚く育て始めました。禅の教えである「山川草木悉皆成仏(あらゆる生きとし生けるものに仏性が宿る)」の精神を、日々の実践として体現したのです。
やがてその評判が広がるにつれ、全国から心ない人間による遺棄が急増するという苦渋の時期を経験することになります。それでも寺は警察や愛護団体と連携し、遺棄防止の防犯カメラ設置やパトロールを強化しながら、保護シェルターとしての役割と修行道場としての規律を両立させ、現在に至る独自の調和を築き上げました。