大会のステージに立つ選手たちは、単に筋肉を誇示しているわけではありません。フィジークの審査基準には、緻密に計算された美のルールが存在します。日本国内の主要コンテスト現場で審査員が注視するポイントは、大きく分けて以下の4点に集約されます。
第1に「上半身のアウトライン(Vシェイプ)」です。肩幅の広さ、ウエストの絞り、そして背中の広がりが描く逆三角形のプロポーションがベースとなります。特に「メロン肩」と称される発達した丸い三角筋と、極限まで絞り込まれた腹筋群(シックスパックや腹斜筋の陰影)のコントラストは必須条件です。
第2に「トータルパッケージとしての爽やかさ」です。肌のトーン(適切なカラーリングや日焼け具合)、ヘアスタイル、ステージ上での堂々とした立ち居振る舞い、自然な笑顔までもが審査対象となります。険しい表情で筋肉を力ませるのではなく、余裕を感じさせる表情で優雅にポーズを決めることが求められます。
これらを表現するためのフィジークのポージング規定は、ボディビルとは完全に差別化されています。力こぶを強調する「フロントダブルバイセップス」や「モストマスキュラー」といったポーズは禁止されており、基本となるのは「フロントポーズ(正面)」と「バックポーズ(背面)」、そしてサイドのターンです。手を腰に当て(ワンハンドまたはツーハンド)、片足をわずかに引いて体幹の引き締まりと広背筋の広がりを自然に見せる技術が要求されます。
近年では、フィジークとボディビルの中間に位置するクラシックフィジークというカテゴリーも爆発的な支持を集めています。クラシックフィジークは、アーノルド・シュワルツェネッガーらが活躍した1970年代の「ゴールデンエイジ」のプロポーションを再現する競技であり、身長に対する厳格な体重制限のもと、クラシックトランクスを着用して下半身を含む全身の筋肉美とバキュームポーズなどを競い合います。自分の骨格や目指す肉体像に応じて、フィジークかクラシックフィジークかを選択する選手が増加しています。