「もし検査中にパニックになったら出してもらえないのではないか」という疑念こそが、恐怖を膨らませる最大の引き金です。結論から言えば、MRI途中でやめることは完全に受診者の自由であり、医療現場において決してタブーではありません。
検査開始時、受診者の手には必ずゴム球状の非常用ブザーが握らされます。これを一度でも強く握ると、操作室の技師へ瞬時に警報音が鳴り響き、機械の動作は一時停止します。マイクを通じてスタッフと直接会話ができ、息苦しさや体調不良を訴えれば、わずか数十秒でベッドが外へ引き出されます。大学病院等の統計データによると、閉所や不安を理由に検査を中断・リタイアする患者は全体の約2〜5%存在しており、医療スタッフは中断対応に完全に慣れています。「途中でやめても怒られない」「自分にはいつでも脱出する権利がある」と認識するだけで、心のハードルは劇的に下がります。
どうしても自力での静止が難しいと予想される重度の閉所恐怖症やパニック発作の既往がある方には、MRI鎮静剤の処方が行われます。具体的には、検査の30分〜1時間前に短時間作用型の抗不安薬(ジアゼパムやエチゾラム等)を経口投与する方法や、点滴で軽度の麻酔薬(プロポフォールやミダゾラム等)を投与して浅い睡眠状態で検査を実施する方法があります。事前の問診時に「閉所恐怖症のため薬で落ち着かせてほしい」と申し出れば、多くの総合病院で柔軟に対応してもらえます。