Web上には「車のエアコンガスは経年劣化で自然に抜けるため、毎年補充するのが当たり前」という言説が散見されます。しかし、これは明確な誤解です。
家庭用ルームエアコンと同様に、カーエアコンの配管ラインは基本的に気密が保たれた密閉回路です。車の激しい振動や温度変化によって、配管のジョイント部分にあるゴムパッキン(Oリング)から微量の冷媒が長い年月(数年単位で数グラム程度)かけて浸透することはあっても、「1年でエアコンが冷えなくなるほどガスが抜ける」ことは構造上あり得ません。1シーズンで冷えなくなった車両は、どこかに亀裂や穴が開いている「故障車両」です。
さらに、2020年代以降の車両において急激に進んだ「新型冷媒への世代交代」も知っておくべき盲点です。
長年主流だったフロンガス「HFC-134a(R134a)」は地球温暖化係数(GWP)が高いため、近年の新型車では環境負荷の極めて低い「HFO-1234yf」への切り替えが急速に進んでいます。しかし、この新型冷媒は原料コストが高く、従来のR134aが1缶数百円〜1,000円程度で流通しているのに対し、HFO-1234yfは1缶で数倍から10倍近くの価格差があります。冷媒ガスチャージ工賃を含めると、ガスの補充だけで2万〜3万円を超える見積もりになる事例が増加しており、自身の愛車の冷媒仕様を確認しておくことが防衛策となります。