デッドストックというジャンルにおいて、特に熱狂的な市場を形成しているのが「ミリタリー」と「スニーカー」の2大カテゴリーです。両者の現場では、どのような熱量と取引が行われているのでしょうか。
1. ミリタリーデッドストック:軍の国家予算が産んだ最高峰の遺産
米軍のM-65フィールドジャケットや、フランス軍のM-47カーゴパンツをはじめとするミリタリーデッドストックは、古着市場において別格の扱いを受けます。これらは一般市場向けではなく、国家予算を投じて兵士の生命を守るために極限環境を想定して作られた「官給品」です。軍の補給基地やシェルターに非常用備蓄物資として数万点単位で木箱に密閉保管されていたものが、冷戦終結や基地閉鎖に伴う払い下げ(サープラス)によって民間に流出しました。
都内の老舗ヴィンテージショップ店主は、近年の買い付け事情について次のように証言します。「10年ほど前までは東欧やアメリカ中西部の軍用倉庫へ行けば、未開封のカーゴパンツが山積みで見つかりました。しかし2020年代以降、現地のストックはほぼ完全に底を突いています。今やロット単位での発掘は奇跡に近く、ヨーロッパのディーラー間でも激しい奪い合いが起きています」。この急激な供給減が、直近数年間における相場の急騰を決定づけています。
2. スニーカーデッドストック:履くアートピースとしての神格化
もう一つの主役がスニーカーデッドストックです。1985年製のオリジナル「Air Jordan 1」やヴィンテージの「Converse All Star(USA製)」などは、コレクターズアイテムとして数百万規模の価格で売買されます。元箱や当時のシューレース、包み紙まで揃った状態の個体は、もはや履物ではなく「20世紀ストリートカルチャーの美術品」として扱われています。
スニーカーのデッドストックを愛好するコミュニティでは、単に保管するだけでなく、真空パックや除湿剤を用いた徹底的な湿度管理が行われています。「新品のまま時を止めた造形」を所有すること自体が、スニーカーヘッズにとってのステータスシンボルとなっているのです。