インターネット上の論壇やSNSでは、公共の場で叫ぶ子供や大人に対して「親のしつけがなっていない」「自己管理ができない甘えだ」と断じる短絡的な言説が後を絶ちません。しかし、これらは脳機能障害や神経疾患に対する無理解が生み出した典型的な認知の歪みです。
医学的に立証されている通り、前述したチック症やASDのメルトダウン(感情崩壊)は、純粋な神経学的要因によって生じます。これを道徳心や根性論でコントロールすることは、心臓の鼓動を気合で止めろと要求するのと同じ無意味さを持ちます。叱責や体罰によって恐怖を与えると、一時的に声が止まるように見えても、ストレスホルモン(コルチゾール)が急増し、後により深刻な二次障害(うつ病、強迫性障害、不登校、自傷行為)を引き起こす決定打となってしまいます。
さらに、外見上は健常者と変わらない大人が突如叫び声をあげるケースについて、「薬物乱用者ではないか」「異常犯罪者ではないか」という極端なラベリングがなされる傾向があります。しかし現場の救急搬送データ等を分析すると、その多くはパニック発作や激しい解離症状、低血糖症による急性錯乱など、早急な身体医療の手当てを要する急性疾患です。「奇異な行動=危険人物」と結びつけるステレオタイプは、迅速な救護を妨げる重大な社会的リスクとなっています。