布団に入ってまどろんでいるとき、あるいはデスクワークや移動中の仮眠で意識が遠のきかけたとき、突発的に筋肉が収縮する現象は、一般に「ジャーキング」と呼ばれています。医学的な正式名称は入眠時ミオクローヌス(Hypnic jerk / Sleep starts)です。
ミオクローヌスとは、自分の意志とは無関係に筋肉の一部あるいは全体が瞬間的に素早く収縮する不随意運動を指します。しゃっくり(横隔膜のミオクローヌス)と同様の現象が、全身の骨格筋で起きている状態です。米国睡眠医学会(AASM)の分類でも、これは病的な異常ではなく、入眠期に生じる正常な生理的運動の範疇として明確に位置づけられています。
では、寝落ちでビクッとなる仕組みは体内でどのように生じるのでしょうか。その鍵を握るのが、脳幹にある網様体賦活系(もうようたいふかつけい)と大脳皮質の連携バランスです。
通常、覚醒状態から睡眠状態へと移行するプロセスでは、脳全体の興奮を抑える神経伝達物質GABA(ガンマアミノ酪酸)の分泌が増加し、筋肉の緊張を司る運動神経の指令が段階的に遮断されていきます。全身の筋肉が脱力し、緩やかな眠りに入るのが通常のリズムです。ところが、過密スケジュールや過度の疲労が重なると、脳の覚醒レベルだけが急激にダウンする一方で、末梢の筋肉は緊張状態を維持したままという「自律神経のタイムラグ」が発生します。
急速に緩んでいく身体の感覚を、脳が「高い場所から落下している」「姿勢が崩れて危険な状態にある」と誤認し、危機を回避しようとして脊髄へ向けて瞬時に強い筋収縮命令を送信します。これが、入眠直前に手足が跳ね上がる寝てる時ビクッとなる理由の生理学的正体です。