この楽曲を語る上で、鈴木聖美というシンガーの特異性に触れないわけにはいかない。プロデビュー当時、彼女はすでに30代半ば。酸いも甘いも噛み分けた大人の女性が放つその歌声は、当時のアイドル全盛期やキラキラしたニューミュージックの潮流の中にあって、あまりにも強烈な異端だった。
スモーキーで、ざらついていて、心の奥底を爪で引っ掻くようなブルースの質感。彼女の歌声には、平坦な日常を生きる人間が思わず息を呑むような「人生の重み」が宿っていた。
弟である鈴木雅之(ラッツ&スター)の洒脱で洗練されたソウルフルなボーカルと、姉・聖美の泥臭くも圧倒的なエモーション。二人の声が交差するとき、そこには単なる男女のデュエットという枠を超えた、魂のぶつかり合いとしか形容できないスリリングな摩擦熱が生まれた。予定調和の甘いハーモニーではない。互いの孤独をぶつけ合い、傷口を確かめ合うようなボーカルの応酬が、楽曲の芯を形作っている。