この草原の美しさは、完全な天然林ではない。人が火を入れ続けてきたからこそ保たれている人工の生態系だ。毎年春先に台地を真っ黒に染め上げる伝統行事「野焼き」。もし火を止めれば、草原はあっという間に灌木に覆われ、あの白と緑のコントラストは過去の遺物と化す。
しかし、担い手不足は深刻な臨界点を迎えている。高齢化する地元保存会を支えるため、2026年は都市部からのボランティアや企業研修生が炎の監視ラインに加わった。バチバチと音を立てて枯草を呑み込む炎の帯、顔を焦がす熱風、灰混じりの黒煙。自然をあるがままに残すことと、伝統的な野焼きによってカルスト特有の植生を守ることの狭間で、現場の苦悶は続いている。