ネット上の不確かな書き込みや誤ったDIY知識の中には、磁石の性質を根本から見誤った極めて危険な裏ワザが散見されます。それらを鵜呑みにして実行することは絶対に避けなければなりません。
その筆頭が「熱湯につけたりライターやドライヤーで加熱して磁力を弱める」という都市伝説です。確かに物理学上、強磁性体は一定温度(キュリー点)を超えると磁性を失う性質(熱減磁)を持ちます。しかし、一般的なネオジム磁石の耐熱温度は約80℃前後であり、これを超える加熱を行うとメッキが破壊され、有害なガスが発生したり、磁石が急激に不可逆減磁を起こして永久に使えなくなります。さらに、熱湯から取り出す際に熱い磁石同士で指を挟めば、熱傷と外傷の複合事故に直面することになります。
もう一つの重大な誤りは、「隙間に金属製のマイナスドライバーやカッターナイフを力任せに叩き込む」行為です。強磁性体である鉄製工具を近づけた瞬間、手元の制御を失ってドライバーが磁石に吸着され、刃先が滑って作業者の手を深く切り裂く事故が多発しています。また、ドライバーの先端が磁石のメッキ層を傷つけ、そこから内部の酸化腐食(サビ)が急速に進行して磁石そのものがボロボロに崩壊する原因にもなります。金属製の鋭利な道具は絶対に差し込んではいけません。