廻しは大相撲における唯一の身装具であり、これが外れることは土俵上での絶対的なタブーとされています。日本相撲協会の勝負規定には、極めて珍しい「不浄負け(反則負け)」のルールが存在します。
具体的には、取組中に廻しが完全にほどけて前袋が外れ、力士の陰部が土俵上で露出してしまった場合、審判団によって即座に反則負けが宣告されます。大相撲の長い歴史の中でも適用例は極めて稀ですが、過去に昭和45年(1970年)5月場所の前頭・朝登対松竜戦や、平成12年(2000年)5月場所の十両・朝乃翔対朝嵐戦などで記録されています。
こうした事態を絶対に防ぐため、支度部屋での「まわしの締め方」は力士2〜3人がかりで行う過酷な作業です。
- 縦折りと芯の形成:幅約60〜80cmある絹布を縦に4つ〜6つ折りにし、内部に厚手の芯布を入れて強度を高めます。
- 前立てと股通し:股間を通す「前立褌(まえだてみつ)」を形成し、急所を隙間なく保護します。
- 胴回りの締め上げ:胴体に4〜5回巻き付ける際、付け人や兄弟子が力士の背後から力任せに引っ張り上げます。力士本人は息を吐ききって腹を凹ませ、限界まで硬く締め込みます。
- 結びの固定:背中側で「結び」を作り、激しい突き押しや引き技でも緩まないよう強固に押し込んで完成させます。
取組中に万が一廻しが緩んだ場合、行司が「まわし待った」をかけて取組を一時中断し、その場で廻しを締め直させてから中断時の体勢を正確に再現して再開する規定となっています。