長年、料理の現場やネット上の言説で「ゴーヤは白いワタの部分に最も強い苦味があるため、スプーンで跡形もなくこそぎ落とすべきだ」と語られてきました。しかし、農林水産関連の研究機関や調理科学の官能評価データにおいて、この常識は明確に否定されています。
実際には、苦味成分モモルデシンが最も高濃度で蓄積しているのは緑色の外皮(イボイボの表皮部分)であり、白いワタや種子周辺には苦味成分がほとんど含まれていません。試しに生のワタだけをスプーンで削り取って口に含んでみると、スポンジ状の食感とわずかな甘味を感じるだけで、強い苦味は皆無であることが分かります。
では、なぜこれほど厳重にワタを取り除くよう指導されてきたのでしょうか。最大の要因は「水分量」にあります。ワタは多量の水分を保持しているため、油に入れた際に激しい油跳ねを引き起こす主因となり、仕上がりの食感をベチャつかせてしまいます。つまり、ワタを取り除く本質的な目的は「苦味取り」ではなく、「油跳ね防止とカリカリ食感の確保」にあるという事実を知っておく必要があります。あえてワタと種をつけたまま薄切りにして揚げる「ワタごとスナック揚げ」が成立するのも、この科学的裏付けがあるからです。