レシピ通りに作業したつもりでも、「仕上がりが茶褐色に濁ってしまった」「子供が口から出してしまうほど苦い」という失敗に直面する方は少なくありません。これらには明確な生化学的理由が存在します。
よもぎが黒く変色する主因は、葉に含まれるポリフェノールオキシダーゼ(酸化酵素)の働きです。この酵素は加熱が不十分だったり、茹でた後に常温で放置されたりすると活性化し、ポリフェノールを酸化させて黒色色素メラニン類似物質を生成します。熱湯で酵素を一気に失活させ、すばやく氷水で冷却することが黒ずみ防止の絶対条件です。
また、強烈なアクと苦味の正体は、タンニン類をはじめとする水溶性ポリフェノールや揮発性の精油成分(シネオールやツヨンなど)です。適度な苦味はよもぎの持ち味ですが、過剰なエグみを抜くためにはアルカリ性(重曹)の水溶液で細胞壁を緩め、内部のアクを湯中に溶出出させる必要があります。ただし、水に晒す時間が長すぎると(1時間以上など)、心地よい芳香成分まで抜け落ちて単なる無味乾燥な繊維になってしまうため、最長でも30分程度にとどめるのがプロの鉄則です。