フィットネスクラブの会員や市民ランナーのコミュニティを調査すると、「目標心拍数を維持しようとしても数値が安定しない」という生々しい相談が後を絶ちません。大手質問サイトやSNS上でも、以下の2つの対極的な悩みが頻出しています。
第1のパターンは、「少し走っただけですぐに心拍数が160〜170bpmまで跳ね上がる」というケースです。都内の大手ジムに勤務するインストラクターは次のように証言します。
「運動習慣のない方がいきなりランニングを始めると、心臓の1回拍出量(1回の収縮で送り出す血液量)が小さいため、身体が酸素不足を補おうとして心拍数だけを過剰に急上昇させてしまいます。さらに、睡眠不足や脱水症状、前日のカフェイン摂取過多によって交感神経が昂っていると、軽いジョグでも危険水域まで跳ね上がるケースが目立ちます」
第2のパターンは、逆に「早歩きをしても100〜110bpm程度から全く上がらない」という悩みです。これには大きく分けて2つの要因があります。ひとつは長年の運動経験によって心肺機能が発達し、スポーツ心臓に近い状態になっているケースです。もうひとつは見落とされがちな臨床的要因で、降圧薬(高血圧治療薬)として広く処方されている「β遮断薬(ベータブロッカー)」を服用している場合、心拍数の上昇が薬理作用によって強く抑制されます。また、スマートウォッチの装着位置が手首の骨に近すぎたり、バンドが緩んでいたりして毛細血管の血流を正しく検知できていないといった物理的トラブルも多発しています。