ネット上のハウツー記事では「とにかくきつく引っ張って結べば解けない」という言説が散見されますが、これは身体運動科学の観点から明白な誤解です。靴紐を過剰にきつく締め上げると、足背部を通る浅腓骨神経や足背動脈が長時間圧迫され、足の痺れ、血行不良、さらには腱鞘炎を引き起こす危険性があります。
また、盲点となりやすいのが「紐の形状とコーティング」による物理的摩擦係数の違いです。 靴紐には大きく分けて「平紐」と「丸紐」が存在します。接地面の広い平紐は繊維同士の噛み合わせが強固でほどけにくいのに対し、断面が円形の丸紐は接触面積が極めて小さく、さらに見た目の光沢を出すためのワックス加工(蝋引き)が施されていると、滑り出し摩擦係数が劇的に低下します。丸紐が通されたシューズで通常の蝶結びを採用すること自体が、解けやすさを自ら招いていると言えます。