スペイシーっちを語る上で欠かせないのが、彼が率いる「スペイシー団(自称:スペイシーブラザーズ)」の存在です。彼らの究極の目的は「たまごっち星を征服し、自分たちの理想の帝国を築くこと」にあります。宇宙の果てにあるスペイシー星からやってきたと自負し、世界を手中におさめるべく日夜怪しげな作戦を企てています。
しかし、なぜ彼らはこれほど壮大な野望を抱きながら、視聴者やプレイヤーから「憎めない悪役」として愛されているのでしょうか。公式エピソードや作中の描写を丹念に追うと、そこには悪役らしからぬ3つの決定的な理由が浮かび上がってきます。
第1に、「根が善良すぎて悪事に徹しきれない」という点です。征服のための資金稼ぎとしてTAMAX-TVのADやたまストリートの清掃など地道なアルバイトに励む姿はおなじみですが、困っているたまごっちを見かけると、作戦そっちのけで助けてしまうこともしばしばです。悪事を企みながらも道徳心や人情を捨てきれない姿は、見る者に強い親近感を抱かせます。
第2に、舎弟である「アカスペっち」「ピポスペっち」との擬似家族のような絆です。情熱的で家事全般をこなすアカスペっちと、怪力だがマイペースなピポスペっち。リーダーであるスペイシーっちがどれほど突飛な命令を下しても、2人は「兄貴!」と絶対の信頼を寄せています。互いを思いやり、狭いアパートで鍋を囲むような彼らの日常は、悪の組織というより仲睦まじい三兄弟そのものです。
そして第3に、主人公・まめっちとの奇妙な関係性が挙げられます。スペイシーっちはまめっちを「たまごっち星征服を阻む最大のライバル」と一方的に敵視していますが、当のまめっちはスペイシーっちを単なる「頼もしいクラスメイト」「ちょっと個性的な友達」として心から信頼しています。悪意をぶつけようとしても純粋な親切心で返されて調子を狂わされるコメディ構造が、彼の悪役としてのトゲを完全に無効化しているのです。