ネット上の情報では「薬を飲んで膿が止まったから完治した」という誤った個人の体験談が散見されます。しかし、これは医学的に極めて危険な誤解です。膿の出口が一時的に塞がっただけの状態であり、体内の遺残組織自体が消滅したわけではありません。
最も警戒すべきは、尿膜管膿瘍を放置した場合の腹膜炎リスクです。炎症が激化すると膿瘍の被膜が破れ、無菌状態であるはずの腹腔内に大量の膿と細菌が流出します。その結果、激しいショック症状を伴う急性汎発性腹膜炎を発症し、緊急開腹手術と集中治療室(ICU)管理を余儀なくされる事態に陥ります。敗血症を併発した場合、致死率は一気に跳ね上がります。
さらに見過ごせないのが尿膜管癌への進行リスクです。尿膜管遺残を構成する上皮細胞は、長期間にわたる慢性的な炎症刺激を受け続けることで、稀に悪性腫瘍(尿膜管腺癌)へと形質転換を起こします。尿膜管癌は早期発見が極めて難しく、発見された時点では膀胱やリンパ節、腹膜へ転移しているケースが多いため、予後が不良な難治性がんとして知られています。「単なるへその炎症」と軽視して慢性的な感染を放置することは、将来的な発がんリスクを放置することと同義なのです。