日本には古来、特定の食品同士を同時に摂取することを禁じる「合食禁(がっしょくきん)」という食文化の知恵が存在します。代表例であるうなぎとスイカの禁忌は、江戸時代の本草学書や貝原益軒が著した『養生訓』などの養生思想が発端とされています。
歴史社会学および民俗学の観点から昔の言い伝えの由来を紐解くと、先人たちがこの食べ合わせを避けた背景には3つの合理的理由が存在していました。
第1に、「高価な贅沢品に対する戒め」です。江戸時代においても、うなぎは庶民にとって特別なご馳走でした。スイカのような利尿作用や消化促進作用を持つ食べ物を直後に大量摂取すると、胃腸が過剰に刺激されて下痢を起こし、せっかくの高級な滋養強壮成分を体内に吸収することなく排出してしまう恐れがありました。食材を無駄にせず大切に消化吸収させるための生活訓だったと解釈できます。
第2に、「食中毒の発生防止」です。冷凍冷蔵設備が存在しなかった時代、夏の暑さの中で傷みやすいうなぎと、傷んだスイカを同時に食べることは、細菌性食中毒の温床でした。激しい腹痛や下痢に見舞われるリスクを避けるため、禁忌として民間に広く伝承された背景があります。
第3に、「土用の丑の日の過食防止」です。夏の盛りに脂っこい蒲焼きを食べた後、さっぱりとした甘いスイカを食べると満腹中枢が麻痺し、際限なく食べ進めてしまいます。その結果としての消化不良を防ぐための防護柵として言い伝えが機能していたのです。