大名行列が街道を進むたび、周辺の地域経済には巨大な景気刺激策が注入された。とくに東海道五十三次に代表される主要街道の宿場町は、彼らが落とす莫大な滞在費によって潤い、大いに活気づいた。
本陣や脇本陣といった最高級旅館のサービス向上はもちろん、一般の旅籠や茶屋、さらには土産物屋に至るまで、参勤交代が生み出す経済的波及効果は測り知れない。これにより、日本独自の高度な観光・旅行業の基礎が江戸時代を通じて急速に整備されていった。
本来は軍事移動の変形であったはずの道中が、次第に庶民の「お伊勢参り」や観光旅行の安全性を担保する道筋へと変貌を遂げていく。治安維持と道路の舗装、橋の整備が進んだことで、世界でも類を見ないほど安全な街道文化が花開いたのだ。