「すべての物質は毒であり、毒でないものはない。用量だけが毒と薬を区別する」――16世紀のスイスの医師パラケルススが遺したこの言葉は、現代の化学品管理においても色褪せない金言だ。私たちが日常的に口にする食塩ですら、一度に大量摂取すれば劇物に近い中毒症状を引き起こす。逆に、劇物として厳重に管理される化学物質であっても、適切に希釈され、用途を守れば産業を支える不可欠な触媒となる。
近年ではYouTube(化学物質安全講習アーカイブ)などを通じて、労働基準監督署や業界団体が実際の事故事例やパラケルススの概念を分かりやすく映像化して啓発を促している。「薄めれば平気だろう」という現場の勝手な思い込みが、化学反応熱による突沸や有害ガスの発生を招く。物質そのものの危険性だけでなく、取り扱う分量と環境に対する鋭敏な感覚を研ぎ澄まさなければならない。