落語家として脂が乗り、さらなる円熟味を増していた十代目金原亭馬生さんを突然の悲劇が襲います。1982年(昭和57年)9月13日、馬生さんは食道がんのため54歳という若さで息を引き取りました。
馬生さんは無類のお酒と煙草好きで知られ、最後まで芸人としての無頼と美学を貫いた生涯でした。体調を崩して入院してからも、取り乱すことなく静かに自身の運命と向き合い、家族や弟子たちに最後まで気遣いを見せていたと伝えられています。
当時27歳だった池波志乃さんにとって、大黒柱であり心の拠り所であった父の死は計り知れない衝撃でした。しかし、父が最期まで見せた「芸人の引き際の美しさ」や「ダンディズム」は、池波さんの人生観に決定的な影響を与え、その後の女優人生を支える大きな芯となりました。