錦之介の父・三代目時蔵と母・ひなの間に生まれた男児たちは、まさに演劇界のドリームチームだった。長男の初代中村歌昇、次男の四代目中村時蔵、三男の錦之介、四男の初代中村獅童(本名・小川三喜雄)、そして五男の中村嘉葎雄。この五兄弟が残した足跡はあまりにも大きい。
特に五男の中村嘉葎雄は、兄・錦之介とともに映画界へ飛び込み、圧倒的な演技派俳優として映画賞を総なめにした。繊細な人間描写から癖のある悪役までを演じ分けるバイプレイヤーとして、今日まで日本映画界の重鎮であり続けている。また、歌舞伎の女形として若くして将来を嘱望されながら30代で早世した次男・四代目時蔵の存在も、一族の絆と悲劇を語る上で欠かせない影を落としている。