学術的に「甲(こう)」と称されるこの構造体の大部分は、純度の高い炭酸カルシウムで構成されている。その含有率は実に全体の約90%から95%に及ぶ。残りの僅かな成分も、主にキチン質などの有機物と微量の天然ミネラル群だ。
電子顕微鏡でその断面を観察すると、微細な層が連なる格子状の多孔質構造(マイクロチャンバー)がどこまでも広がっている。コウイカはこの無数の空洞にガスと液体を交互に注入・排出させることで、高精度な浮力調整を行っている。水深数十メートルの水圧に耐えうる頑丈さと、水に浮くほどの圧倒的な軽量性を両立させたこの構造。現代の材料工学においても、次世代の多孔質バイオ素材の開発モデルとして研究が急速に進んでいる。