ネット上の感想などでは「単なるお調子者の昆虫の詩」「やんちゃな男の子のパロディ」としてライトに消費されがちな本作だが、詩の意味と背景を深く読み解くと、そこには自然界の過酷さと命の刹那性が色濃く投影されている。
昆虫学的な事実として、かまきりの成虫が活動できる期間は夏の終わりから秋にかけてのわずか数カ月間にすぎない。鳥や天敵に狙われ、激しい生存競争に晒されるなかで、彼らは常に死と隣り合わせの緊張感の中にいる。第1連で描かれる「あまり ちかよるな」「どきどきするほど ひかってるぜ」という威嚇のポーズは、単なる生意気さではなく、いつ失われるかわからない小さな命を全力で燃焼させている証なのだ。
工藤直子氏が描いた『のはらうた』の住人たちは、人間のように未来を憂いたり過去を悔やんだりしない。「いま、この瞬間」を100パーセントの力で生き切る潔さがあるからこそ、その言葉は読む者の胸を激しく揺さぶるのである。