ガガガSPが演奏する『にんげんっていいな』を聴いて多くの人が驚くのは、歌詞自体は昭和の国民的アニメ『まんが日本昔ばなし』のエンディングテーマと全く同じという事実です。作詞は数々の児童文学や歌謡曲を手掛けた山口あかり、作曲は昭和歌謡界の巨匠・小林亜星。この黄金コンビが生み出した童謡の言葉を、彼らは一語たりとも改変していません。
それにもかかわらず、聴き手が受け取る感情は原曲と180度異なります。原曲(中島義実、ヤング・フレッシュ歌唱)は、クマやタヌキといった森の動物たちが「人間の温かい生活」を純粋に無邪気に羨むメルヘンの世界でした。そこには夕焼け空の下、温かいごはんを食べ、お風呂に入って布団で眠るという、日本の原風景的な幸福が描かれています。
しかし、ガガガSPのボーカル・コザック前原が歪んだディストーションギターに乗せて叫ぶとき、その情景はまったく別の陰影を帯びます。歌われている内容は「帰る家があることの尊さ」でありながら、その裏側に張り付く「現実に居場所を見失いそうな孤独」「人間関係の摩擦に傷つく泥臭い現実」が生々しく浮かび上がるのです。童謡の無菌室から、埃っぽい路地裏の現実へ。言葉を変えずに文脈だけを根底から覆すこのアプローチこそ、ガガガSP版の最大の革命でした。