時代をさらに遡ると、明治天皇の崩御の直後に起きた、もう一つの象徴的な死がある。日露戦争の英雄であり、学習院院長を務めた乃木希典陸軍大将の殉死だ。1912年9月13日、大喪の礼の当日の夜、乃木は妻・静子とともに自刃した。
このニュースは当時の日本社会に凄まじい衝撃を与えた。夏目漱石の小説『こころ』や、森鴎外の『興津弥五右衛門の遺書』など、当時の知識人たちの創作活動にも決定的な影響を及ぼしている。封建的な忠義の死として称賛される一方で、近代化を進める日本において「時代遅れの蛮行」とする批判もあり、世論は二分された。