街中で「ピットブルを見かけた」と話題になる犬の多くは、実際にはアメリカンピットブルテリア(APBT)そのものではなく、共通の祖先を持つ近縁種や派生種です。専門ブリーダーの調査データでも、「ピットブルに似た犬種」に関する月間検索数は高水準を維持しており、その関心の高さがうかがえます。
これら外見が酷似する犬種群は、専門用語で「ブリータイプ(Bully Breeds)」と総称されます。19世紀初頭のイギリスにおいて、牛と闘わせるブラッド・スポーツ「ブル・ベインティング」に用いられたオールド・イングリッシュ・ブルドッグとテリア種を交配させた「ブル・アンド・テリア」が出発点となっています。その後、目的別に分岐して固定化されたため、頭部の形状や筋肉の付き方に共通の面影を残しているのです。
現在、日本国内の住宅街やドッグランで目にする機会が最も多い代表格は、以下の4犬種に集約されます。
第一の正体はアメリカンブリーです。1990年代のアメリカで、ピットブルの攻撃性や過剰な闘争本能を取り除き、完全なコンパニオンドッグ(家庭犬)として確立されました。骨太で極端に横幅が広く、一見するとピットブル以上に威圧的ですが、気質は極めて温和で人懐っこい特徴を持ちます。
第二の正体はスタッフォードシャーブルテリア(通称スタッフィー)です。イギリス原産の中型犬で、かつての闘犬の血を引きながらも、人間に対する深い愛情と忍耐強さから、現地では「ナニードッグ(子守犬)」と呼ばれるほど家庭的な信頼を得ています。
第三がアメリカンスタッフォードシャーテリア(通称アムスタッフ)です。ピットブルと同じルーツを持ちながら、アメリカンケネルクラブ(AKC)公認のショードッグおよび家庭犬として、攻撃的な気質を排除する方向で100年近く選抜交配されてきた経緯があります。
そして第四に、時にピットブルと誤認される超大型の警護犬種として、イタリア原産のカネコルソやアルゼンチン原産のドゴアルヘンティーノが存在します。これらは遠目にはピットブルの巨体版のように見えますが、使役目的や体格基準はまったく異なる独立した犬種です。