JR東海で役目を終えた車両の多くは、通常であれば西浜松などの解体場へ直接廃車回送され、スクラップとなる運命を辿ります。しかし、2024年春に突如として浮上したのが「三岐鉄道への大規模譲渡」でした。静岡車両区や神領車両区に留置されていた211系5000番台・6000番台の計30両(3両編成×8本、2両編成×3本)が、貨物列車や甲種輸送などを経て富田駅・保々車両基地へと相次いで運び込まれたのです。
三岐鉄道三岐線では、1970年代から80年代にかけて導入された元西武鉄道の黄色い電車(751系・801系・851系・101系など)が主力として走り続けてきましたが、製造から半世紀近くが経過し、老朽化と部品調達の難航が深刻な経営課題となっていました。新造車両の導入には1編成あたり数億円規模の莫大な投資が必要となるため、大手私鉄やJRからの譲受車を探していた三岐鉄道にとって、状態が良好でステンレス車体によるメンテフリー化が期待できる211系5000番台はまさに理想的な選択肢だったといえます。
大手JRの直流近郊形電車が地方中小私鉄へこれほどまとまった編成分譲渡される事例は極めて異例であり、鉄道関係者やファンの間では「地方私鉄の車両導入史における一大転換点」として大きな話題を呼びました。