本堂からさらに奥へと進み、極楽門をくぐって「奥の院」へと続く参道へ足を踏み入れると、それまでの華やかな寺院風景とは一線を画す、圧倒的な異空間が広がります。
参道の両脇を埋め尽くすのは、大人の背丈をはるかに超え、高いものでは4メートルから8メートル近くに達する無数の巨大な木製卒塔婆(そとうば)です。木々が生い茂る杉木立の中に林立する卒塔婆の森は、初めて訪れた参拝者が思わず息をのむほどの荘厳さと異彩を放っています。
この特異な光景は、伊勢志摩地方に古くから伝わる「岳詣り(たけまいり)」と呼ばれる先祖供養・死者供養の民俗信仰によるものです。地元では「人は死ぬとその魂は朝熊山へ登る」と信じられており、宗派を問わず、家族が亡くなると四十九日や初盆の法要後に朝熊岳へ登り、供養のために巨大な卒塔婆を建てる習わしが現在も続いています。
実際に現地を歩くと、潮風と山風に晒されて年月を感じさせる古い卒塔婆から、真新しい木肌の香りが漂う卒塔婆までが整然と並び、この地域で先祖を想う祈りがいかに連綿と受け継がれてきたかを肌で実感させられます。単なる観光スポットではなく、生と死が交錯する生きた祈りの現場であることを意識し、静粛な態度で歩を進めることが求められます。