アニメ・ゲームファンコミュニティにおいて、『鳥の詩』は単なる人気曲の枠を超え、長年にわたり「国歌」の尊称で親しまれてきました。なぜこれほどまでに神格化されるに至ったのか、その背景には3つの決定的な要素が存在します。
第一に、麻枝准氏×折戸伸治氏×高瀬一矢氏による卓越した楽曲設計です。作曲を担当した折戸伸治氏の哀愁と清涼感が同居するメロディラインに対し、音楽制作集団「I've」の高瀬一矢氏が手がけたアレンジは、トランスのスピード感とJ-POPの親しみやすさを高度に融合させたものでした。当時としては画期的な8分の6拍子を取り入れたリズム進行は、聴く者に「風に乗って空へ舞い上がるような感覚」をもたらします。
第二に、「クリスタルボイス」と称された歌手・Lia氏の規格外の歌唱力です。制作当時、アメリカ・ロサンゼルスに留学中だったLia氏が現地スタジオで仮歌をレコーディングした際、その圧倒的な声の伸びと表現力にスタッフ全員が息を呑んだという逸話が残されています。高音域でも一切の濁りがない澄み切ったボーカルは、作品のテーマである「どこまでも続く夏の青空」を見事に体現していました。
第三に、2000年代初頭のインターネットカルチャーとの共鳴です。当時、爆発的な盛り上がりを見せていた2ちゃんねる(現5ちゃんねる)の「葉鍵板(Leaf, Key掲示板)」を中心に、『鳥の詩』のイントロが流れると全員で直立不動になり敬意を表す「国歌斉唱」というネットミームが定着しました。作品への純粋なリスペクトとコミュニティの一体感が結びついた結果、現在に至るまで「オタクの国歌」としての地位が揺るぎないものとなったのです。