深夜帯に人件費を払い、防犯上のリスクを負ってまで調剤薬局が24時間営業を維持する背景には、単なる物販の売上確保にとどまらない医療構造上の必然性があります。
最大の要因は、国が進める「地域包括ケアシステム」の構築と、在宅医療・終末期医療の現場シフトです。住み慣れた自宅で療養を続ける重症患者が増加する中、深夜の急変や癌性疼痛に対する医療用麻薬の緊急処方、輸液ポンプのトラブルなどに対応できる「24時間稼働の薬局機能」が地域医療に不可欠となっています。診療報酬制度においても、24時間対応体制を整備している薬局には「地域支援体制加算」などの手厚い評価が与えられており、制度面からの後押しが営業継続のインセンティブとして機能しています。
もう一つの側面は、夜間休日急病対応における地域インフラとしての役割です。救急医療機関の負担軽減が叫ばれる中、軽症患者の受け皿としてドラッグストアが機能することは、医療崩壊を防ぐ防波堤になり得ます。しかし現状では、夜勤シフトに入れる薬剤師の絶対数不足や、深夜の安全確保コストの重圧から、全国どこでも均一に24時間調剤網を広げるには至っていません。特定の大手チェーンや中核医療機関周辺の旗艦店に機能が集約されているのが実情です。