法面が形成されるプロセスには、山や丘を削って平地を造る「切土(きりど)」と、低い土地に土を運び込んで高くする「盛土(もりど)」の2種類があります。切土盛土と法面の関係において、斜面の安定性はまったく異なる力学特性を示します。
切土法面は、数万年以上の歳月をかけて締め固められた天然の地層を削り出すため、岩盤や硬質粘土が露出している場合は比較的強固です。しかし、地層の不連続面(節理やすべり面)が斜面と同じ向きに傾いている「受け盤」や、地下水が湧き出す箇所では、工事後に風化が一気に進み、大規模な岩盤崩壊を引き起こす危険性を秘めています。
対照的に盛土法面は、外部から搬入した土を人工的に積み上げて締め固めた構造です。どれほど入念に転圧を行っても原地盤に比べれば間隙(すき間)が多く、豪雨時に雨水が浸透すると土粒子間の摩擦力が急激に低下します。その結果、自重に耐え切れなくなった土塊が一気にすべり落ちる「円弧すべり」や「表層崩壊」のリスクが切土よりも高くなります。
この崩壊を防ぐ指標となるのが法勾配の計算方法です。一般的な斜度表示(角度:30度など)や道路勾配(パーセント:10%など)とは異なり、土木工学では「垂直高1に対する水平距離の比率」として表記されます。
たとえば、高さ1mに対して水平方向の距離が1.5mある傾斜は「1:1.5」と書き、現場では「1割5分(いちわりごぶ)」と呼びます。角度に換算すると約33.7度です。国土交通省の『道路土工構造令』や建築基準関係規定では、土質ごとに安全とされる標準法勾配が厳格に定められています。
- 硬岩の切土法面:1:0.3〜1:0.8(急勾配が可能)
- 砂質土の切土法面:1:0.8〜1:1.2
- 一般的な盛土法面(高さ5m未満):1:1.5程度
- 大規模な盛土法面(高さ15m以上):1:1.8〜1:2.0(極めて緩やかな傾斜が必要)
また、法面の高さが数メートルを超える場合、斜面の途中に幅1〜2m程度の平坦な段差を設けます。これを「小段(こだん)」と呼び、斜面を流れる雨水の流速を落として浸食を食い止めるとともに、将来の点検作業や補修用足場を組むための重要なステップとして機能します。