ネット上の簡易的なレビューでは、本作を「悪を倒すヒーローを讃えるストレートな応援ソング」と分類する言説が散見されます。しかし、これは楽曲の多層的な構造を見落とした典型的な誤解です。
原典である『いぬやしき』の物語構造を振り返ると、同じ力を手に入れた高校生・獅子神皓は無差別殺人を繰り返す破壊者となり、初老の犬屋敷壱郎は命を救う道を選びました。力そのものに善悪はなく、それを行使する人間の内面によって救いにも破滅にもなり得るというアイロニーが根底に存在します。
『My Hero』の歌詞が問いかけているのは、「正義とは何か」という絶対的な答えではなく、「誰もが容易に加害者にも被害者にもなり得る社会で、それでも他者に手を差し伸べられるか」という倫理的な選択です。この緊張感があるからこそ、歌詞の端々に漂う哀愁と凄みがリスナーの胸を締め付けます。