「空前絶後(くうぜんぜつご)」は、漢検5級相当にも指定される基礎的かつ極めて格式の高い故事成語です。辞書的な定義では「これまでに例がなく、今後も起こりそうにないほど珍しいこと」を指します。この言葉の凄みは、文字を二つに分解した構造(構成)にあります。
前半の「空前」は「前に空(むな)しく」、つまり過去の歴史をどれほど振り返っても前例が一切存在しない状態を指します。そして後半の「絶後」は「後を絶つ」、すなわちこの先未来永劫にわたって同等の事象が再現される可能性を断ち切ることを意味します。つまり、「過去の否定」と「未来の否定」が組み合わさることで、歴史上の唯一無二性を極限まで強調した表現となっているのです。
語源を辿ると、中国・宋代の文人たちが残した詩文や書画の批評に行き着きます。北宋の時代に編纂された美術書『宣和画譜』や当時の文人・蘇軾らの論述において、過去の名匠たちの技術を凌駕し、後世の誰も追随できない孤高の傑作を称える言葉として用いられたのが始まりとされています。本来は、人間の生み出した至高の芸術や、国家の歴史を揺るがす特異な大事業に対してのみ捧げられる最上級の賛辞でした。