初夏の果実を語る上で避けて通れないのが、「梅(ウメ)」との混同問題です。実際、あんずやすもも、梅はいずれもバラ科サクラ属に属し、古くから自然交雑を繰り返してきた親戚関係にあります。特に未熟な青い状態ではプロでも一瞬見失うほど酷似していますが、以下の3つの観察眼を持てば確実に識別可能です。
第一の識別点は「果実の硬度と酸味の質」です。梅は完熟しても組織が引き締まっており、生で食べることはまずありません。梅に含まれる酸味成分の主役は極めて刺激の強い「クエン酸」であり、未熟な青梅には青酸配糖体(アミグダリン)が含まれるため生食は厳禁とされています。すももやあんずはリンゴ酸主体のまろやかな酸味であり、熟せば柔らかく生食が可能です。
第二の識別点は「果肉のジューシーさと繊維感」です。すももは成熟するにつれて果肉が柔らかく崩れ、滴るほどの水分を蓄えます。これに対して梅は繊維質が緻密で水分を抱え込む性質があり、加工しても煮崩れしにくいのが特徴です。あんずはその中間に位置し、果肉は柔らかいものの繊維がしっかりとしており、加熱してもペースト状にとどまります。
第三の識別点は「種の表面のテクスチャー」です。梅干しを食べた後に残る種を観察すると、無数の小さな穴や窪み(小孔)が深く刻まれているのが分かります。一方、すももの種は比較的平滑で筋が通っている程度、あんずの種は平らで滑らかな円盤状をしており、縁に鋭い稜角(フチ)があるのが決定的な違いです。